熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「あ、あの……っ。色々、本当にありがとうございま──」
「ということで、泣きやんだならさっさと寝ろ」
「え……?」
「付き添いの付喪神もいなくなったのだから、明日は早くに出ていってもらうからな」
けれど、花の考えは次の瞬間には粉々に砕かれた。
そこまで言うと八雲は颯爽と踵を返し、一度も振り返ることなく部屋をあっという間に出ていってしまう。
(な、なに、これ……?)
残された花は呆然と八雲が出ていった扉を見つめた。
一瞬でもあの男を見直した自分がバカだった。
しかし、八雲のお陰で後悔が晴れたのは確かで、そう思うと花はなんとも言えない気持ちになった。
♨ ♨ ♨
「ん〜〜〜……よく寝た……」
翌朝、目を覚ました花の心はやはり、晴れていた。
こんなにもグッスリと熟睡したのはいつぶりかもわからない。