熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「さ、昨夜は泊めてくださって、ありがとうございました。お陰で、ゆっくり休むことができました」
感謝の言葉を告げると、ぽん太もまた満足そうに頷いてみせる。
「これから支度をして、整い次第ここを出たいと思っています」
けれど花が「帰る」と口にした途端、ぽん太と黒桜の表情が曇った。
「ああ……それは困りましたなぁ」
「困る?」
「花さん、お支払いはどうなさるおつもりですか?」
黒桜に尋ねられ、一瞬キョトンと目を丸くした花だが、すぐに宿泊代金のことを言われているのだと気が付き返事をした。
「もちろん、お支払いします。鏡子さんと、ふたり分で大丈夫です。え、と……それで、一泊の料金はおいくらですか?」
持ち合わせで足りればいいのだけれど、と花は思ったが、最悪カードでの支払いが可能かも聞いてみる必要がある。