熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 


「そ、それじゃあ、その善ポイントでお支払いするにはどうすればいいですか⁉」


 憤りを堪えながら花が尋ねると、ぽん太と黒桜は待ってましたとばかりにニマァッと笑って口を開いた。


「人が現世で稼ぐことができるのはお金だけじゃから、花は現世ではないこの場所で、働いて善ポイントを稼ぐしかないのぅ」

「え……」

「ちょうど今、仲居を募集中だったのです。それと、八雲坊のお嫁様も大募集中でして!」

「お嫁、様……?」


 言われていることの意味がわからず、花は石像のように固まった。


(ちょっと待って、どういうこと……? いや、そういえば確か、あのときぽん太さんが……)


 思い出すのは、花がぽん太と初めて会ったときの会話だ。

 熱海サンビーチでぽん太と出会い、話しかけられたときにも確か、ぽん太は『とあるお宿の主人の嫁になるチャンスがどうのこうの〜』と、言っていたような、いなかったような気がする。

 
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