メヌエット ~絵里加
絵里加の心も、喜びが溢れていた。
女の子にとって 指輪は特別な アクセサリーだから。
絵里加のことを思い、誕生石を調べてくれた健吾。
大好きな健吾と、二人で選んだ指輪だから。
嵌めているだけで、指から心まで温かくなった。
ランドマークタワーの中を 少しブラブラして 二人はレストランに向かう。
梅雨入り前の空は、まだ明るくて。
以前、家族で来たレストランの窓際からは 少し暮れ始めた街が見える。
「あのね、前にここで パパとママの出会いの話しを聞いたの。」
ジュースで乾杯をし ゆっくりと食事を進める。
「へえ。絵里加の家族って、本当に仲良しだね。親の出会いの話し 俺知らないよ。」
健吾は驚いた顔で言う。
「絵里加達が聞かないうちに、パパとママが 自主的に話したのよ。」
絵里加は、少し呆れたように言う。
その顔が可愛くて、健吾はフッと笑ってしまう。
「絵里加のパパとママ、意外と天然?」
健吾の笑顔に、絵里加も明るく笑う。
「相当、天然だと思う。ちょっとドラマチックな大恋愛なの。だから子供達に、自慢したかったんだと思うの。」
絵里加の言葉に、健吾は明るく笑う。
「いいご夫婦だね。俺達も、絵里加のパパとママみたいになりたいね。」
「今でも、結構イチャついているの。絵里加は 知らない振りしてあげているけど。」
健吾は、また笑ってしまう。
今日で20才なのに、絵里加はあどけなくて。可愛くて。
守りたい、と強く思う。この笑顔を。
「俺達も、ずっとイチャつきたいね。パパとママの年になっても。」
健吾はフッと笑う。絵里加は、照れた顔で俯くと、
「絵里加も パパとママみたいに ケンケンと ずっと一緒にいたいなあ。」
少し頬を膨らませて、上目使いに健吾を見る。
「早く、結婚したいね。そうすれば、ずっと一緒にいられるよ。」
絵里加を真っ直ぐ見て健吾は言う。
絵里加の為に、早く大人になりたい。
絵里加と暮らす日々は、温かさしか想像できないから。
絵里加は俯いて、そっと指輪に触れていた。