メヌエット ~絵里加
一歩前に進んだ絵里加の 秘めやかな輝きに 健吾は はっとしていた。
絵里加が落ち着くまで、しばらくベンチで話してから駅に向かう。
改札口の明るい光で見た絵里加は、とても美しくて。
「絵里加、ママにばれちゃうかもね。」思わず健吾は言う。
「大丈夫。絵里加、言わないから。」
二人は “キスをしたこと” と言えなかった。
「違うよ。絵里加、朝と違う顔になっているから。」
健吾はフッと笑う。
“うん?” と言う目で、絵里加は健吾を見上げる。
「可愛い絵里加に、色気がプラスされた感じがするよ。」
絵里加は、頬を染める。
「大人の絵里加だから。」と小さく答えて。
健吾は少し、焦っていた。自分を抑えられなくなりそうで。
その日が近いことを感じて。
絵里加を傷つけずに、導くことが できるのか。
キスをしただけで 戸惑ってしまう絵里加だから。
大切に、壊さずに導いてあげたい。