メヌエット ~絵里加
26
健吾は9時前に、絵里加を家まで送り届けた。
二人、名残惜しくて切なく見つめ合う。
「おやすみ、絵里加。」
「今日は、ありがとう。おやすみなさい。」
絵里加は、小さく手を振って家に入っていった。
花のような可愛い後ろ姿が ドアの中に消えるのを見届けて 健吾は歩き出す。
ずっと一人で思い続けてきた絵里加が 振向いて自分に微笑んでくれる。
それ以上を望むことは、贅沢だから。
心以上のものは、ないと知っているから。
若い健吾の葛藤は 健康な証しだけれど 少し自分を責めていた。