メヌエット ~絵里加
「6月か。お祝いしないとだね。」
主語がない健吾の言葉に 絵里加はつい 頷いてしまう。
健吾の意図が掴めずに。
降りる駅のホームに、電車が滑り込む。
「LINEしてもいい?時々。」
健吾は、席を立つ直前に言う。
「もちろん。」絵里加は答える。笑顔で。
健吾もはにかんだ笑顔を見せる。
絵里加の胸はまたコトリと鳴った。
「駅からは、ダッシュだよ。」
電車を降りると、健吾が時計を見て言う。
「うそ。余裕で間に合うって言ったじゃない。」
絵里加が責めるように言うと
「大丈夫。走れば余裕だから。」
健吾は明るく笑う。
それは、昔みたいな笑顔だった。