メヌエット ~絵里加
「部屋は、そんなに多くなくていいよね。各部屋を広くゆったりと作りたいかな。絵里加は何か希望ある?」
健吾は絵里加に確認する。
「ううん。」絵里加が笑って答える。
「綺麗な奥様ですね。あ、ご結婚はこれからでしたか。まだお嬢様だ。」
担当者は、絵里加の美しさに息を飲む。
「卒業と同時に、結婚する予定なんです。」
正直に話す健吾に 絵里加は頬を染めて俯いてしまう。
「うらやましいな こんな素敵な方を奥様にできるなんて。」
心を開いてきた健吾と絵里加に、担当者が言う。
「そんなことないです。」
控えめに否定する絵里加に 担当者はアンケートで名前を確認する。
「奥様、もしかして。」と聞いてきた。
「はい。廣澤工業の。」健吾が 控えめに言う。
担当者は、驚きと納得の混じった 複雑な表情で二人を見る。
多分、良いお客さんに当ったと思っているだろう。
「一度、お宅にお邪魔して お父様ともお話しさせて頂ければ。ご予算なども お伺いしたいので。」
と言う担当者に 健吾はお父様に電話して 予定を確認する。
「今お盆休みで 明日から出かけてしまうので。次の日曜日でしたら 何時でも大丈夫ということです。」
健吾の言葉に 担当者は手帳を開いて 予定を確認する。
「では、日曜日の一時でいかがですか。それまでに、土地を見て 簡単な参考プランをお持ち致します。」
たくさんのパンフレットを頂いて モデルハウスを後にする二人。
丁寧に見送られて。
二人が帰った後で 多分話題になっているだろう。
若いお客さんも 大切にするようにと 言っているだろう。
そんなことを考えながら 健吾の腕を取って歩く絵里加。