メヌエット ~絵里加
「あっ、そうだ。ケンケンに ワンピース買ってもらったの。」
得意気に言う絵里加に、
「絵里ちゃん、おねだりしたんでしょう。」
と母が甘く咎める。
「違うんです。絵里加はいらないって言ったんです。でも俺が、どうしても欲しくなっちゃって。」
と健吾が言ってくれる。
「わかるよ、ケンケン。デパート歩いていると、可愛い服に目が行くんだよね。これ、麻有ちゃんに似合いそうって。」
笑顔で言う父に 絵里加が悲鳴を上げる。
「はあ。麻有ちゃんて。」
みんなが大きな声で笑い 父は一瞬 しまったという顔をした後で 言い訳をする。
「ケンケンの絵里加は パパにとっては ママだからね。」
照れ笑いの父に 母も恥ずかしそうな笑顔をする。
「それくらい姫達は、愛の結晶なんだよ。」
大人っぽくいう樹君に、
「タッ君達だって。一目惚れしたお兄様が まちぶせするほどの 猛アタックで生まれた 愛の結晶なのよ。」母は逆襲する。
「麻有ちゃん。」
と言う伯母様と、
「止めなさい。」
と言う伯父様の声が重なり みんなが笑う。
樹君と翔君は、顔を見合わせて 苦笑する。