メヌエット ~絵里加
翌朝、健吾より先に目覚めた絵里加は シャワーを浴びてキッチンに下りて行く。
母は もう朝食の準備をしていた。
「おはよう。」というと、
「早いわね。たまには寝坊していいのに。」
と優しく言ってくれる。
「良く寝たから。自然と目が覚めたの。」
少し照れて母を見る。
母も、絵里加を眩しそうに見つめる。
「今朝の絵里ちゃん、艶々しているわ。」
絵里加は 恥ずかしさに頬を染めてしまう。
「昨夜の鰻のせいよ。」
言ってしまった言葉の 二つの意味に さらに頬を染める。
「絵里ちゃん お味噌汁にお茄子刻んで。」
母は、心地よく笑ったあとで 絵里加に任務を与えてくれる。
絵里加は ほっとして朝食の準備を手伝い始める。
みんな揃って食べる朝食。
今朝は和食だけど 母は男の子達も満たすように お肉も使ってボリュームたっぷりに用意する。
「麻有ちゃんの料理って 美味しいだけじゃなくて 何かおしゃれだよね。」
樹君に言われて 母は嬉しそうに微笑む。
「あー。わかります。絵里加もそうです。」
健吾も 大きく頷く。
何も言わないで ぷっと吹き出す翔君。
「カッ君。なによ。」
絵里加が頬を膨らまして言うと、
「遺伝、遺伝。」
と翔君は言い みんなが爆笑する。
「八ヶ岳を回って 帰ろうと思うんです。」
と言う健吾に 樹君と翔君が丁寧に道を教えてくれる。
家族みんなが 健吾に感謝して 健吾も絵里加の家族に感謝する。
とっても素敵な時間だった。
「明後日、帰るからね。」
と言う父に 笑顔で手を振って 絵里加達は東京に戻る。