メヌエット ~絵里加
「絵里加とケンケン、最近仲良いよね。告白された?」
亜弥に言われる。
長い付き合いの友達は、気付くのが早い。
「まさか。最近、朝同じ電車になるから 一緒に来ているだけだよ。」
絵里加の答えは、半分本当で 半分は嘘。
「付き合えばいいのに。ケンケン、カッコよくなったし。小さい頃から知っているから安心じゃない。」
陽子が言う。みんなも頷く。
「ケンケンなら、絵里加の彼として 認められるよね。性格も良いし。」ひとみも言う。
「だから、違うって。全然、付き合ってとかも、言われてないから。」
絵里加に ズケズケと入って来ない健吾の優しさに、少し物足りなさも感じる。
「ケンケン、まだ告白してないの?もう、何やっているの。誰かに、絵里加を取られても知らないよ。」亜弥が言う。
みんな幼馴染だから。
言葉はきついけれど、温かい。
「絵里加、誰にも取られないよ。そんなに軽くないから。」
絵里加は、少し膨れて言う。
でもそれが、健吾を待ち受ける言葉だとは 気付かずに。
みんなは、思わせぶりな笑顔で頷きあい、
「やっと絵里加にも春が来たか。どうりで最近、ウルウルしていて可愛いと思った。恋をすると綺麗になるって、本当なんだね。」
陽子が言う。みんなが口々に
「いいなあ。」と繰り返す。
絵里加は、否定しても 見透かされると知り 肩をすぼめて俯いた。