メヌエット ~絵里加
顔を上げた絵里加を見つめる目は、今までよりも熱い。
絵里加の瞳も、熱く潤んでしまう。
「俺は、最近楽しいから。絵里加も楽しいなら、いいなって思うよ。」
少しずつ、毎日一歩ずつ、近付いてくる健吾。
絵里加を尊重しながら、無理のないスピードで。
子供の頃一緒に、木の枝で芋虫を突いた健吾なのに。
絵里加の心は、切ない思いで満たされはじめている。
これが、好きっていう気持ちなのか。
自分でもわからない。
一緒にいたいという思い。
何も話さなくても、同じ空気を共有したいと思う。
「絵里加も楽しいよ。ママに気付かれちゃうほど。」
素直な絵里加は、駆引きをしない。
「よかった。ありがとう。」健吾が言う。