メヌエット ~絵里加

江ノ電も、混んでいた。

二人、つり革に掴まって車窓を眺める。

レトロな電車は 民家の間をすり抜けながら いくらも走らないうちに 海岸線が見える。
 

「わあ。もう海が見える。」

絵里加は小さく歓声を上げる。
 
「うん。サーフィンしているよ、ほら、あそこ。」

健吾が楽しそうに、絵里加に言う。
 
「本当だ。あっ、波に乗っている。」


少し背伸びして外を見る絵里加。

見つめ合うと、笑顔がこぼれる二人。
 

「絵里加、身長何センチ」唐突に聞かれ、
 
「161センチ。ケンケンは?」絵里加も聞き返す。
 
「俺は、178くらい。」健吾は、ちょっと得意気に答える。
 

「あー。絵里加のこと、小さいって思ったでしょう。」

健吾を見上げて 首を傾げる絵里加に 健吾は笑いながら、
 

「思わない、思わない。ちょうど良いよ。俺と。」と言う。

軽く頬を膨らませた絵里加は最後の “俺と” で、全てを許してしまう。
 


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