メヌエット ~絵里加

「でも嬉しい。ちゃんと言ってもらえて。」

絵里加の瞳は、少し潤んでくる。

絵里加も健吾に伝えたいと思う。自分の気持ちを。


でも今話すと、涙が込み上げてきそうで。

絵里加は大きく息をつく。


健吾は愛おしそうに絵里加を見る。

絵里加にとって、すべてが初めてで。


こんな時、どうしたらいいかさえ わからない。


自分の胸の高鳴りに怯え、コーヒーを一口飲む。
 


健吾は、またフッと笑ってくれる。

絵里加を捉えた笑顔で。


幼い頃の やんちゃな笑顔を思い出してみても 絵里加の胸は鎮まらない。



これが好きっていうことなの、と母に問いかけたかった。
 


< 34 / 207 >

この作品をシェア

pagetop