メヌエット ~絵里加

7時前の暗くなるまでに、健吾は家に送ってくれた。
 

「ただいま。」と家に入って 母の顔が眩しく見える。

今日は、陽子達と江の島に行くと言った。

そういう嘘は 初めてだったから。

絵里加は、母の顔を見ることが辛い。
 

「お帰りなさい。天気良くて、混んでいたでしょう。」

母は、いつも通り優しく声を掛けてくれる。
 
「メッチャ混みよ。連休ってすごいね。」


思ったよりも普通に話せる自分に驚く。
 
「砂っぽいから、着替えるね。」

ひとまず部屋に入る。


健吾と過ごした服で、家族と平気で向かい合えない。

ただ手を繋いだだけなのに。

肩を抱かれただけなのに。



でも、今朝の絵里加とは 確実に違う自分。
 



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