メヌエット ~絵里加
「そう。あのね、ケンケンが パパとママに お付き合いすることを 挨拶したいって言うの。会ってくれる?」
父と母は、顔を見合わせる。
「えらいね。パパも会いたいよ。」父は温かい目で言う。
「絵里加が、嘘ついて出かけるの いやだろうって。」
絵里加はまた、泣きそうになる。
「ちゃんと絵里ちゃんのこと、考えてくれて。優しいのね。」母は言う。
「絵里加の家族が、仲良しだって知っているから。あのね、ちゃんとしたお付き合いだから。パパとママが心配するような事は、していないからね。」
絵里加は、涙汲んで言う。
「パパもママも、そんなこと 言ってないよ。」父は笑って言う。
「明日、一緒にランチするから。その後で 家に来てもいいかな。」
「いいよ。連れておいで。」
父は 笑顔で言うけれど 少し寂しそうにも見えた。
横に座る母を見ると、絵里加は涙が溢れてしまう。
「どうしたの。泣くなんて。」
母は優しく言って、絵里加の肩を抱き寄せた。
母の肩に顔を伏せて、絵里加は少し涙を流す。
「絵里加、変なの。悲しくないのに、涙がでちゃうの。」
そっと顔を上げて、絵里加が言う。
母は、絵里加の肩を抱いたまま、
「絵里ちゃん、恋しているのよ。」と言う。