メヌエット ~絵里加
「ケンケン、兄弟は?」誘導尋問の次は、身元調査。
「妹が一人います。壮馬君の一つ下です。」
「恭子ちゃん。キョンキョンって呼んでいたよね、昔。」絵里加は言う。
小学生の頃は、よく帰りのバスで一緒になった。
3才違いで中学と高校は、入れ違いになる。
絵里加も、最近は会っていなかった。
「へえ。うちと逆なのね。」母が言う。
家庭環境が近いことにも、きっと安心している。
「絵里加は、ケンケンのどこが好きなの。」父は絵里加に振る。
「やだ、親と本人の前で。言えないわ。」
照れて俯く絵里加は、本当に可愛い。
「ケンケンは、言ってくれたのに。絵里加も言わないと。」父に言われて、
「ケンケンといると、すごく安心するの。絵里加が絵里加のままでいられるの。不思議なくらい、ほっとするの。」絵里加は言う。
「毎日でも、一緒にいたい?」
母に聞かれて、絵里加は頷いてしまう。
はっとして母を見ると、ニコニコ笑っている。
「そうらしいよ、ケンケン。」と父も笑う。
「僕もだけど。大丈夫です。抑えていますから。」
健吾は真面目に答え 父と母は、明るく笑う。そして、
「抑えてよ、今は。」と父は言う。
「やだ、パパ。」
「もちろんです。」また、健吾と絵里加は同時に言ってしまう。