メヌエット ~絵里加
「それでさ、連休 軽井沢に行くんだけどケンケンも 一緒に行かない?」
また父は、突飛な事を言う。
「パパ、何言っているの。」
「いいんですか。」
また絵里加と健吾の言葉は重なる。母は笑い、
「ケンケンが嫌でなければ。全部じゃなくても、一泊でもね。」と言う。
「みんないるから。昼間は二人で出かけてもいいし。夜は、バーベキューやろうよ。」
絵里加は躊躇する。みんないるから。
みんなの前で、健吾と一緒にいることが恥ずかしい。
「だって。部屋もないし。」絵里加が言う。
「壮馬と一緒でいいよ。絵里加はパパ達の部屋で寝れば。」
父は、みんなに健吾を会わせたいのだろう。
みんなが、大切に育てた絵里加の、初恋だから。
「行きたいなあ。本当にいいですか?」
妙に乗り気な健吾に、絵里加は戸惑う。
「もちろん。車は混むから、新幹線でおいでよ。駅までは、絵里加を迎えに行かせるから。」
絵里加は不安気に、母を見る。
母は、大丈夫という顔で 頷いてくれる。
「ケンケン、いいの?」絵里加が健吾に聞くと、
「うん。軽井沢でデートできるの、楽しみだよ。」
健吾は屈託なく笑う。
そう言えば、健吾は 随分リラックスしていた。
父の人扱いにはめられて。
いつの間にか、ケーキも食べている。
そんな健吾の大らかな所も、絵里加は大好きだった。