メヌエット ~絵里加

《絵里加のパパ、優しくてカッコいいね。俺、絵里加のパパみたいになりたいな》
 
《ケンケンの方が、カッコいいよ》

絵里加は一人、笑顔になる。
 
《うれしいな。大学一の美人に言われて》
 
《大げさ!》

絵里加は、笑顔の絵文字を送る。
 
《可愛くて、優しくて。絵里加、最高の恋人だよ》

両親に会ったことで 健吾の心は いつもよりオープンになっていた。
 
《ありがとう。ケンケンも。いつも絵里加のことを大事にしてくれて。大好きだよ》

両親に 隠さず付き合えることは 素直な絵里加を もっと正直にさせた。
 
《絵里加。俺も、大好き》
 
《今度、絵里加を俺の親にも、紹介させてね》

絵里加は、一人で顔を赤らめる。
 
《もちろん。でも、緊張しちゃう》

親に紹介する ということは 真剣な付き合いだから。

緊張するけれど、とても光栄なこと。
 
《大丈夫。絵里加なら。俺の親、喜ぶよ》
 
《うちの健吾に手を出さないで、って言われない?》

と言う絵里加の言葉に
 
《まだ、手を出してないでしょう》

と、健吾の笑顔が見える気がした。
 
《そうだった》

絵里加も笑顔になる。
 
《明日裕介達に 絵里加のこと 話してもいい?》

明日は学校がある。
 
《もちろん。絵里加も陽子達に、言ってもいい?》

そうすれば大学でも、もう少し自然に一緒にいられる。
 
《俺も、もちろん。みんな驚くよ》



一つの曇りもない絵里加だから。

みんなに見守られる 開放的な付き合いが 似合っている。


それを知っている健吾は、少しずつ回りを整えてくれる。

それは健吾自身を成長させ、輝かせていく。
 

明日の朝、乗る電車の時間を決めて 健吾におやすみを言うと 絵里加はリビングに降りていく。


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