メヌエット ~絵里加

「絵里加、ちょっと来て。」

ちょっと離れた健吾の席のまわり。

小学校から一緒の裕介が立ち上がって、絵里加を呼ぶ。


戸惑う絵里加は、ひとみに押されて、裕介の方に行く。
 

「絵里加、マジで健吾と付き合うの?」

裕介と真也と啓太。

みんな小学校からの友達。
 

「うん。」絵里加は、頬を染めて俯く。
 
「ずるいよ。なんで、健吾なんだよ。」真也が大きな声で言う。
 

「真也、声、大きいよ。」

健吾が、笑顔で言う。絵里加も頷く。
 
「泣く奴、相当いるから。健吾、見の回りに気を付けろよ。刺されたりして。」

啓太が言うと、絵里加は不安な目を 健吾に向ける。
 

「やめてよ。絵里加、怖がっているよ。」

健吾が、絵里加を見て言う。 “ねえ” と言う表情で。


絵里加も健吾に頷く。
 

「マジでラブラブだ。全員、完敗。」裕介が言う。

その時、先生が来て 絵里加は席へ戻る。


絵里加を見送る健吾は、優しい瞳で。

絵里加は守られている幸せに、頬を染める。


そんなことが、さらに絵里加を輝かせていることには、気付かないまま。
 

そして健吾も、新しい魅力を身にまとう。

ずっと好きで、憧れ続けた絵里加を 振向かせたことで。
 
 


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