メヌエット ~絵里加

1年毎に絵里加は美しくなって、健吾の心を乱していた。

絵里加が渋谷でスカウトされたとか。

バレエ雑誌に載ったとか。

本当か嘘かわからない噂は、絶えなかった。


その度に健吾の心は、激しく揺れる。

絵里加が遠くへ行ってしまう恐怖で。
 


でも当の絵里加は、何も変わらない。

いつも陽子達と、ケラケラ笑っている。


健吾に出会うと、笑顔で手を振ってくれる。

健吾は、待つと決心したのに 焦って揺れ動いてしまう。

絵里加に恋しているから。



小さな喜びと自己嫌悪の中学時代だった。
 


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