メヌエット ～絵里加

「ねえ、お祖母様。ママって昔、泣き虫だったの？」

絵里加も笑顔を返す。
　
「そうよ。すぐ泣くの。でも、だいたいがうれし涙だったわね。」

お祖母様は、温かく答える。
　
「やめて、お母様。」

母が止めても、お祖母様は続ける。
　


「絵里ちゃんのママはね、いつも家族のことを一番に考えて　みんなに感謝しているでしょう。昔から　そうだったの。それで　若いのに偉いわ、って褒めると泣くのよ。」
　
「やだ、お母様。そんなに泣き虫じゃないわ。」母も、笑ってしまう。
　
「最近は、泣き虫　治ったの？絵里加の前では　泣かないもの。」絵里加が言うと、
　
「治らないよ。絵里加達が寝た後で、パパの前で泣くよ。」と父も笑う。
　

「もう、パパまで。」と、母は言う。
　

「じゃあ、絵里加の泣き虫は遺伝だから、仕方ないね。」絵里加は明るく笑う。

「あら、絵里ちゃんは、泣き虫じゃないでしょう。小さい頃から、あまり泣かなかったじゃない。」

お祖母様が、不思議そうに言う。
　

「恋したら、泣き虫になったのよね、絵里ちゃんも。」母は、優しく言う。

絵里加は照れて俯く。
　
「今まで知らなかった気持ちね。絵里ちゃん、大人になったのよ。」

お祖母様の言葉も優しい。

絵里加は、不思議そうに顔を上げて、
　

「大人になったら、泣かなくなると思ったから。」と言う。

恋する感情を、持て余す絵里加を　みんなが温かく見守る。
　


「いいんだよ、姫。泣きたいときは、泣いても。涙を流すと心が洗われて、もっと優しくなれるからね。」

お祖父様の言葉は、絵里加の心に沁み込む。

こんな話しができる家族だから、絵里加は素直で優しくなる。


そして、健吾にも仲良くなってほしいと思う。