メヌエット ~絵里加

「絵里ちゃんくらいの時って、恋が先で 相手を見つけるでしょう。それは逆なのよ。好きな人がいるから、恋になるの。焦らなくていいわ。体中から“好き”が溢れ出るような人に出会えるから。無理して恋の真似をしても、自分が傷つくだけよ。」

母に優しく言われると、安心してしまう。

だから成長できないのかな、と絵里加は思う。
 

「絵里加にも、そういう人が現れるかな。ずっとできなくて、お婆さんになったら どうしよう。」

今の不安を、母に伝える。
 
「大丈夫よ。美奈ちゃんも、そう言っていたのよ。でも、和君と出会えて 幸せそうでしょう。」

母の妹は、30才を過ぎて結婚し 今は、幸せに暮らしている。

絵里加は、ほっとして笑顔になる。
 

「いつか絵里ちゃんも、好きって思える人ができるから。その時に、誇れる自分でいることが 大切なのよ。」

母と話すと、心が軽くなる。

この家族以上に 好きな人ができるのか、やっぱり絵里加は不安だった。
 
 


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