メヌエット ~絵里加
夕食も、賑やかで楽しかった。
健吾は、すっかり家族に馴染んでいた。
廣澤家のバーベキューは、男性が給仕する。
健吾も、みんなと一緒に野菜を切ったり お肉を焼いたり。
いつの間にか、自分でもたくさんお肉を食べていて 父に驚かれる。
「ケンケン、仕事の手際がいいね。うちの会社に来ない?」
父の言葉に伯父様も頷く。
「ケンケンなら、面接は免除だよ。」
「ヤバい。ライバル出現だ。」
樹君が言い、みんなが笑う。
「うちの家族も、結構仲が良いと思っていたけれど。絵里加の家族、本当に仲良しですね。驚きました。」
健吾の素直な言葉に、みんなが微笑む。
「うちは、昔から何でも話すから。秘密がないから、一緒に居ても楽なの。」
絵里加が答える。
「正直 俺、こんなに良くしてもらえるとは 思ってなくて。感動しています。」
健吾の誠意は、みんなに伝わる。
「誰でもいいって訳じゃないのよ。ケンケンが 絵里ちゃんを大切に思っているのが わかるから。ケンケンの人柄よ。」
お祖母様が優しく言う。
「ありがとうございます。光栄です。俺、本気なので。絵里加のこと、本気で大切にします。」
健吾の言葉に、絵里加は涙が溢れる。そっと顔を覆う絵里加に
「誰、絵里ちゃん泣かせたの。責任とってよ。」と伯母様が笑う。
「絵里加、ごめん。泣かないで。」
健吾は、そっと絵里加の肩に手をかける。
「ごめん、じゃないの。絵里加がありがとう、なの。」
そっと顔を上げた絵里加の、涙で光る瞳は とても美しかった。