メヌエット ~絵里加
「絵里加、ありがとう。疲れた?」絵里加を送る道、健吾が聞く。
「最初は緊張したけど、大丈夫。絵里加もケンケンの家族と、仲良くしたいから。」
健吾は絵里加の肩を、ギュッと抱き寄せる。
「ありがとう。」と言って。
絵里加が、健吾の家族と仲良くできたら きっと健吾は嬉しいと思う。
絵里加も同じだから。
健吾を好きな気持ちと同じように 健吾の家族も大切にしたいと思っていた。
土日はレッスンが午前中で、その後は健吾と出かける。
一緒にランチを食べて 街を歩いたり 映画を観たり。
健吾の運転でドライブもした。
一緒にいるだけで楽しくて、絵里加はどんどん 健吾が好きになる。
健吾の瞳も、どんどん熱くなっていた。
まだキスもしない二人。
何もかも初めての絵里加のために 健吾は自分を抑えていた。
あと一歩踏み出してしまったら、止まらなくなりそうな自分を。
それでも、絵里加を抱きしめる時間は、どんどん長くなっていく。