メヌエット ~絵里加

「ママはパパと結婚する時、とっても悩んだの。パパは今の絵里ちゃんと同じ、大きな会社の社長の子供でしょう。ママの実家は、田舎のクリーニング屋さん。家の格が違い過ぎて。ママは、お祖父様とお祖母様に、絶対に反対されると思ったの。」

絵里加は、母の話しに引き込まれていく。
 
「お祖父様達、結婚に反対したの?」絵里加は、そっと聞く。
 
「ううん、全然。とても喜んで、ママを受け入れてくれたわ。すごく優しくしてもらって。今と同じよ。」母は笑顔で言う。
 

「でもね、絵里ちゃん。もしお祖父様達がパパとママの結婚を 許してくれなかったら 絵里ちゃん達は 生まれなかったの。パパとママが 反対を押し切って結婚して 絵里ちゃん達が生まれたとしても 今みたいな生活は、できなかったわ。」
 
「どういうこと?」

母の言いたいことが、絵里加には わからなかった。
 

「たとえば、住む家がないから 部屋を借りるでしょう。お家賃がかかるから、最低限の広さの部屋で我慢するわね。絵里ちゃんと壮君は、二人一緒の部屋になるわ。」

母は、わかりやすく言ってくれる。
 
「パパは普通のサラリーマンだから、お給料もそんなに多くないでしょう。ママも仕事をすることになるわ。絵里ちゃん達の学校は当然公立で 小学生なら放課後は 学童でお留守番よ。」

母の話しを聞きながら、絵里加はだんだん悲しくなってくる。
 

「なんか寂しいね。絵里加、バレエもできなかったね。」母は、優しく笑う。


「普通のおうちって、そういう事なのよ。そういうおうちがほとんど。絵里ちゃんのまわりが特別なの。」絵里加は頷く。
 

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