メヌエット ~絵里加
お互いの挨拶の後、男性陣は会社の話し。
母達は、今日の絵里加の感想。
そんな空間は温かくて、幸せで。
健吾と絵里加は、やっぱり見つめ合ってしまう。
「健吾から絵里ちゃんのことを聞いて、嬉しく思っています。」
楽しく話しながらの 贅沢な食事が終わる頃、健吾のお父様は言う。
「二人、まだ学生なので 今すぐどうっていうことではありませんが。このまま、良いお付き合いをさせて頂けたら 将来は 是非健吾と と思っております。」
絵里加は、驚いて健吾の顔を見る。
「ありがたいお言葉。とても嬉しいです。ケンケン、すごく良い子で。安心して絵里加をお任せできます。」父が答える。
「お父さん、俺がプロポーズする前に どうして言うかな。」
健吾が苦笑する。絵里加も頷いて、
「パパも。絵里加より先に返事して。」
と頬を膨らます。みんなが声を出して笑い、
「いや。悪かったね。絵里ちゃん、すごく良い子だから。手放したくなくて。つい焦ってしまったよ。」健吾のお父様が笑う。
「パパもだよ。ケンケンなら パパ達と同じくらい 絵里加を大事にしてくれるって信じられるからね。」
絵里加の父も、優しく言ってくれる。
俯いた絵里加は 幸せが溢れて 少し涙汲む。
「俺に言わせて。」
と言って健吾は、絵里加を見つめると、
「卒業して、俺が絵里加を養えるようになったら、結婚したいと思っています。それまで、待っていて下さい。」と言ってくれた。
絵里加の目から、大粒の涙が流れる。
「はい。絵里加もそれまでに、家事を勉強しておきます。」小さな声で言う。
温かい歓声と拍手が聞こえる。
俯いたまま涙で、前は見えないけれど。
「もう。また絵里ちゃん泣かせて。」
伯母様の明るい声に、温かい笑いが起きる。
「すみません。」健吾は、そっと絵里加の肩に手を置く。 “泣かないで” と。
「ごめんなさい。大丈夫。絵里加、うれしかったから。」
ニコッと笑う絵里加は、舞台の上よりも輝いていた。