メヌエット ~絵里加
最近講義の時、絵里加達と健吾達のグループは 近くに席を取るようになっていた。
二人が並んで座らなくても、すぐ近くにいるだけで 楽しかった。
「おはよう。」今朝は、亜弥と真也が先に来ていた。
健吾と絵里加が声を掛ける。まだ教室には、生徒がまばらで。
「わあ。絵里加、可愛い。」顔を上げた亜弥が、歓声を上げる。
離れた席の生徒が、絵里加の方を見る。
「やだ。恥ずかしいよ。」絵里加は、そっと亜弥の隣に座る。
「本当に、すごく可愛いよ。スイトピーみたい。」亜弥は、真面目に言う。
「放課後、ケンケンとデートだから。」絵里加は小さく言う。
「何かね、絵里加の回りだけ ライトが当たっているみたいだよ。」
亜弥は 幸せな輝きを そう表現した。そして、
「はい。お誕生日おめでとう。」と言って、小さな包みを差し出す。
「わあ。ありがとう。」と絵里加は言う。
お互いの誕生日に ささやかなプレゼントを贈り合うことは 子供の頃からの習慣。
「開けてもいい?」絵里加が聞くと、亜弥は笑顔で頷く。
金色のリボンを掛けて きれいにラッピングされた箱。
開くと、素敵な髪留めが入っていた。
お花のモチーフを、ラインストーンやパールで装飾した豪華なバレッタ。
そして、ローズピンクのシュシュ。
「素敵。亜弥、ありがとう。」
長い髪の絵里加は、ヘアアクセサリーが大好き。
「どういたしまして。」亜弥は笑顔で頷く。
「ケンケンには、何か貰った?」
亜弥に聞かれて、絵里加は首を振る。
「ホテルのディナーを、セッティングしてくれたの。」
絵里加は、笑顔で言う。
「いいなあ。だからお洒落しているんだ。」
亜弥は 憧れるような目で 絵里加を見た。