悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~
 五人の皇子のうち、誰を皇太子にすべきか皇帝が迷っている。それもまた、前世とは違う。
 父がにこにことしながら、最近のロアの出来事を教えてくれた。

「ヴィルヘルム殿下は、最近、騎士団長との試合で勝利をおさめたんだよ」
「まあ、ヴィルヘルム殿下――そこまで上達しているとは思っていませんでした」

 前世でのヴィルヘルムは、ただ優しいだけの青年だった。だが、今は剣を磨き、かなりの腕前なのだという。
 そんな噂は、レオンティーナの暮らしているこの領地まで、なんとなく伝わってきていた。

「レオンティーナは、ヴィルヘルム殿下と手紙のやり取りをしているのよね?」

 小花模様のクッションに身を預けた母は、優雅な手つきで白磁のティーカップを手に持っている。

「……時々よ、時々。それに、ルイーザ殿下とのお手紙の交換の方が多いわ」

 レオンティーナとヴィルヘルムは、いつの間にか文通するようになっていた。ヴィルヘルムの妹であるルイーザともだ。
 ケルスティンの命を救うきっかけになったのが、レオンティーナの調査結果だったということから、ふたりはレオンティーナに恩義を感じているらしい。

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