悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~
「……え?」

 先ほどと同じ返事をしてしまったけれど、今度はカップをソーサーにぶつけるような無様な真似はしなかった。

(……どうしよう)

 ほんのりと頬が染まっているのを自覚する。
 ヴィルヘルムのことなんて、今、父に言われるまでまったく意識していなかったというのに。

「でも、どうして? 私に会いたいという理由だけではありませんよね?」
「ティーナ自身を見たいんだと思うよ。実際に会うのと手紙のやりとりでは違うだろうしね」

 ヴィルヘルムが、そしてルイーザがレオンティーナに会いたいという。

(何を話したらいいのかしら……)

 両親が目の前にいるのも忘れ、レオンティーナは考え込んでしまう。
 両親が、そんなレオンティーナに、微笑ましそうでありながらも複雑な目を向けていることには気づいていなかった。
 

 ◇ ◇ ◇

 

 母は領地で出産に備え、父は母の出産の時期を領地で過ごすために、皇都ロアに戻って大急ぎで仕事を片付ける。
 レオンティーナは、というと。
 この屋敷に皇族が滞在するのは、父の代になってから初めてということもあり、母に代わって準備に忙しかった。
< 177 / 314 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop