悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く～破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます～

「たしかに、このところ、不作になる地が多いとは聞いていたが、その解決策ということか」
「はい。マレイモは、痩せた土地でも育てられるのですが、年に三度収穫時期はあっても、病にかかりやすいのです。今は、それを回避するための実験を繰り返しているところでして――」

　グラナック博士は、穏やかで恰幅の良い初老の男性だった。大きな農家の三男で、家が裕福だったことから大学まで進むことができたそうだ。
　大学で学んだのは、医療であったが、食べるものが身体を作るという信念と実家の利益を上げるためにマレイモの研究に取り組んでいるらしい。

「……ジャガイモよりよさそうだな。ジャガイモを作るのはやめて、マレイモに切り替えるべきか？」
「いえいえ、そういうものではないのですよ。ひとつの作物を作ればよいというものでもないのです。マレイモも作れればよい――そう考えております」

　水やりのための設備や、条件を変えて育てている畑などを巡ったあと、蒸したマレイモが提供された。
　博士とヴィルヘルムの会話はつまらなそうに聞いていたルイーザであったけれど、蒸して塩だけ振って出されたマレイモを食べるなり目を見張った。