悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~
 自分のやっていることに、意味があるのかどうかももう考えてはいない。
 レオンティーナがそう言った時、ヴィルヘルムはまぶしそうに目を細める。

(なんだか、変な空気)

 ふたりの間の空気が、確実に変わった気がした。

「……殿下。私は……私は、この国が滅びるのは見たくないんです。飢饉に備えておくのも大切なことでしょう?」

 それは、ヴィルヘルムにとっては許しがたい言葉だっただろう。けれど、レオンティーナは口にせずにはいられなかった。
 今で耳の奥に残るレオンティーナを呪う声。
 あの時、罪を犯したのはレオンティーナ一人ではなかったはずだ。他国を招き入れ、国を滅びに導くきっかけを作ったのはヴィルヘルム。
 ヴィルヘルム亡きあと皇位をついだものの、国内の事情には目を配らず、貴族達の専横に任せていたアンドレアス。
 ただ、誰かに愛されることだけを求め、与えられないと知ったのちは浪費に走ったレオンティーナ。
 それ以外の皇族にも、三大大公家の人間にも、多かれ少なかれ責任はあったはずだ。
 ――けれど。
 彼らは、前世の罪を知らない。知っているのはレオンティーナだけ。

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