悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~
 ヴィルヘルムの顔を見ることができない。今まで自分の知らなかった感情が芽生えてきそうになるのを自覚したけれど、レオンティーナはそれを強引に押さえつけた。

「ルイーザ殿下、ソニア、食事にしましょう!」

 今、自分が動揺しているところは見せたくない。湖の側にいるルイーザとソニアを呼ぶことで、ごまかそうとする。

(……昔と変わったから、ちょっと驚いているだけよ)

 昔のヴィルヘルムと、今のヴィルヘルムがあまりにも違うから――だから、少し驚いただけ。
 そう言い聞かせたけれど、赤くなった頬をごまかすのは、少し大変なことだった。
 

 ◇ ◇ ◇

 

 母が産気づいたのは、ヴィルヘルム達と共に父が戻ってきて二十日過ぎた頃だった。予定していたよりもずいぶん遅い。

(……お母様、大丈夫かしら……)

 今回の人生では、父との仲は非常に良好だった。
 年齢の割に若々しいし、体力もあると思うが、それにしたって出産をするにはいささか年齢がいっているのは否定できない。

「……大公夫人が産気づいてからどのくらいだ?」

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