悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~
 ヴィルヘルムが声をかけてきて、ソファに座ったレオンティーナはのろのろと顔を上げた。

「あ……朝からなので……ええと、もう八時間……くらいかと」

 自分が出産するわけでもないのに、レオンティーナの身体が痛いのはどういう理屈だ。
 胸が痛くて苦しい。
立っているのもやっとのことだし、母の声が聞こえるとこにはいない方がいいだろうという理由から、階下の居間に追いやられている。それなのに、 寝室からは、母の苦しそうな声がかすかに聞こえてきて、耳をふさぎたくなるのだ。

「ティーナ」

 ソファで膝を抱えているレオンティーナの隣に、ヴィルヘルムが座る。
 ティーナとレオンティーナのことを呼ぶのは、家族だけに限られていたからレオンティーナは驚いた。

「大公夫人なら大丈夫だ。ロアでも指折りの名医が滞在しているのだから」

 それはわかっている。
 皇妃が皇子を産んだ時に侍医を務めたほどの名医だ。
 普段はロアで患者をとっているのに、皇帝直々の命令で出産まで付き添ってくれることになった。

「そうよ。あなたが心配してもできることってないでしょう?」

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