悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~
 ヴィルヘルムへの気持ちには、まだ名前をつけたくないと思っていた。
 それなのに、周囲は性急に気持ちを固めるようにと押し付けてくる。

「……そうか。では、陛下から正式に話があればよいのだな? 私から陛下にお願いしておこう――よく考えて返事をするように」

 皇妃の前から下がりながら、レオンティーナは胸が苦しくなるのを覚えた。
 断ることは許されない。

「相手次第ということもあるだろうし……そなたひとりでは決められないというのであれば、私の方でも手を打とう。下がってよい」
「し、失礼いたします……」

 皇妃の前から去りながら、レオンティーナは背筋が冷え込んでいるのをひしひしと感じた。
 皇帝の隣に二十年立ってきた女性だ。前世の記憶があっても、太刀打ちできないのではないかという計り知れない迫力を覚えた。

(手を打つって……どういうことかしら)

 前世でも、皇妃は手を打っていた。
 ――ヴィルヘルムを暗殺することにより、アンドレアスを皇太子に押し上げたのだ。
 まさか。
 また、背中がひやりとする。
 まさか、今回もヴィルヘルムを暗殺しようというのだろうか。

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