悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く～破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます～

「ごめん。ルイーザが飛び出してしまって――昨夜、刺客に襲われたのは間違いないが、俺のベッドに寝ていたのは護衛騎士だ。周囲には、俺がやられたものだと思ってほしくて」
「でしたら、医師を呼び、室内中に薬を煎じる香りを漂わせるべきです。部屋に入った瞬間、何もにおわないので妙に思いました」

　あまりにも怒りが頂点に達すると、逆に頭が冷えてくるものらしい。レオンティーナの声音に、ヴィルヘルムもそれを悟ったようだった。

「母の侍医には来てもらったんだが、薬を煎じるにおいまでは気がつかなかった。すぐに対応しよう」
「この血痕は、護衛騎士のものですか？」
「それは、暗殺者のものだ。怪我を負わせたが、逃がしてしまったそうだ」

　淡々と語るヴィルヘルムの様子に、ルイーザもレオンティーナも落ち着きを取り戻してきた。
　ヴィルヘルムの部屋には、護衛騎士を休ませ、ヴィルヘルムはこの部屋にある隠し通路から部屋を出て、毎晩違う場所で休んでいたという。