悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~
 久しぶりに顔を合わせた医師は、レオンティーナを見て微笑んだ。

「あの時のお嬢様が、こんなに立派にお育ちになるなんて」
「秘密は守ってくださる……? その、ソニアの恋人なのよ。どこかで、もめてはいけない相手ともめてしまったみたい」

 まさかヴィルヘルムを襲撃した犯人が逃げ込んできたなんて話をするわけにもいかない。ソニアの恋人ではないが、ソニアの想う相手ならそう取りつくろっても大きく事実から外れるというわけでもないだろう。
 残念なことに、庶民が貴族に切られるというのも珍しい話ではない。女性医師は、レオンティーナの説明を怪しいとは思わなかったようだった。

「かしこまりました。これは、剣で切られた傷のようですわね――縫う必要があります」

 傷を縫わねばならないとは困った。ここに医師の助手を務められる者はいない。

「私にお任せください、お嬢様。彼をここに入れたのは、私の責任ですから」

 悲壮な表情になったソニアがそう申し出る。

「でも、あなた医療に関しては素人でしょうに」
「他の人にはお願いできませんから。私が、先生の助手を務めます」

< 288 / 314 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop