悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~
第二章 皇都ロアでの新しい生活
(帰ってきたわ、この屋敷に……!)

 一週間の馬車の旅を終え、ロアについたレオンティーナは屋敷を見上げた。
 バルダート大公がロア内に構えている屋敷は、皇宮のすぐ側にある。
 皇宮の中にも大公とその家族が宿泊するための部屋は用意されているため、前世の父は、こちらの屋敷に戻ってくることはめったになかった。

「……ただいま!」

 思わず、そんな言葉が漏れる。今回の人生で、この屋敷に来るのは初めてだというのに。
 けれど、レオンティーナの不用意な発言には気づいていなかった。

「はしゃぐのはおよしなさいな。みっともないわよ」
「……はい、お母様」

 前世では婚約が決まったあと、十七歳で嫁ぐことになるまでこの屋敷で暮らした。あまりいい思い出はないが、それでも帰ってきたのだという気になるのはなぜだろう。

「それじゃ、私は先にお部屋に行くわね!」

 そう言い残し、玄関ホールを入ったところにある螺旋階段を勢いよく駆け上がる。淑女らしい慎みは、とりあえず置いておくことにした。

「お待ちなさいな、あなたは部屋の場所を知らないでしょう」

 母の声も耳には届かない。
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