僕の1番大切な人【リニューアル版】
ちゃんと生きていけるのか?


こんな簡単に別れて…


『じゃあね、元気でいてね、凌馬君。本当にありがとう。ありがとうね』


すがりついて、姉さんに、


『行かないでくれ!』


なんて…とても言えなかった。


姉さんが、あまりにも、穏やかで、綺麗な優しい笑顔だったから。


もう前に向かって、しっかり踏み出す決意をした姉さんに、これ以上、僕の情けない姿を、さらすことが出来なかったんだ。


僕達は、ホテルの入口で別れ、姉さんを見送った。


姉さんは、もう振り向かなかった。


何だか…泣けてきた。


もう、二度と会えないかも知れないと思うと、本当は、つらくてつらくて仕方ないのに、僕は、自分の気持ちに嘘をついて、わざと笑おうとした。


泣きながら、笑う。


周りから見たら変質者だ。


『姉さん…絶対、絶対に…幸せに…なって』


僕は、少しだけ歩いて…
< 80 / 96 >

この作品をシェア

pagetop