さよならが言えなくなるその前に


優香はベッドに寝転んでいた。






これで良かったのかも?




だって私はもう社会人で



正直




命が狙われる?



なんて



違う世界で生きてる




ギャングとかとんでもない。



こわいし



…今までのことは



夢見てた。



そう思って




今までの日常にもどればいいだけ。



非現実だし。




もともと、長くつづかなかった



そう思えば



もう終わりなんだから…





優香は顔を手で覆った。




どんなに




前向きに




達観したように




考えても





まぶたの裏に



翔輝の笑顔が




好きですって



言ってくれた顔が




翔輝が…




消えてくれなくて








翔輝



翔輝




翔輝っ。




優香は家を出た。



24歳にもなって



全速力で走るの何回目?



自分の鼓動で呼吸が苦しい。



翔輝に会って



わたし、人生




変わったんだね。




青春してるのかも。



ハアハア。




翔輝がくれたんだね。




こんな、わたし。





もうすぐクラブレッドの通り。




渡ろうとした優香の手を誰かが掴んだ。




「何してるんすか」



大輝くん。



ハアハア。



呼吸が乱れて、言葉が出ない。





「し、しょうきは」




「いや。ダメっすよ。



もう、ここには…」



大輝が言いかけたとき



向こうの通りから入ってきた数台の車が




止まった。




暗い通りの中 黒いメタリックに光る




ゴツい四駆の外車。


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