さよならが言えなくなるその前に
優香はベッドに寝転んでいた。
これで良かったのかも?
だって私はもう社会人で
正直
命が狙われる?
なんて
違う世界で生きてる
ギャングとかとんでもない。
こわいし
…今までのことは
夢見てた。
そう思って
今までの日常にもどればいいだけ。
非現実だし。
もともと、長くつづかなかった
そう思えば
もう終わりなんだから…
優香は顔を手で覆った。
どんなに
前向きに
達観したように
考えても
まぶたの裏に
翔輝の笑顔が
好きですって
言ってくれた顔が
翔輝が…
消えてくれなくて
![](https://www.berrys-cafe.jp/img/member/1123425/cyytsye6ft.jpg)
翔輝
翔輝
翔輝っ。
優香は家を出た。
24歳にもなって
全速力で走るの何回目?
自分の鼓動で呼吸が苦しい。
翔輝に会って
わたし、人生
変わったんだね。
青春してるのかも。
ハアハア。
翔輝がくれたんだね。
こんな、わたし。
もうすぐクラブレッドの通り。
渡ろうとした優香の手を誰かが掴んだ。
「何してるんすか」
大輝くん。
ハアハア。
呼吸が乱れて、言葉が出ない。
「し、しょうきは」
「いや。ダメっすよ。
もう、ここには…」
大輝が言いかけたとき
向こうの通りから入ってきた数台の車が
止まった。
暗い通りの中 黒いメタリックに光る
ゴツい四駆の外車。