となりの一条三兄弟!
「あ、あの……」
しかし聞こえなかったようで、足音は止まらない。
「あのっ!!」
追いかけて肩を叩こうとすると、まるでスローモーションのように交わされてしまった。
「誰だ、お前」
振り向いた顔は、とても嫌悪感に満ちていた。
黒い髪の毛に黒い瞳。私を見下ろすように見つめる視線が鋭くて、そこに重力でもあるかのように、押し潰されてしまいそうなほどだった。
「え、えっと、生徒手帳を……」
なに、この人。怖い。
悪いことなんてしてないのに、悪いことをしたような気分にさせる。そのぐらい私のことを否定するような目付きだ。
「お前、今俺に触ろうとしただろ?」
「だから生徒手帳を渡そうとして……」
「校則違反で処罰するぞ。あと〝それ〟は捨てておけ。お前が触ったのなんて汚くて受け取れない」
私の手の中にある生徒手帳をゴミみたいに指さしていた。
処罰?汚ない?
色々と思考が追いつかないけれど、ひとつの可能性が頭に浮かんでいた。
この人は生徒会で、偉そうで傲慢で、なおかつ肩を叩こうとしただけで汚ないと平気で言い放つ。
「もしかして生徒会長の霧島……禄?」
同級生なのに噂でしかその存在を知らなかったから顔は分からないけど、もし私の勘が当たっているのなら……。