となりの一条三兄弟!
っていうか聖って、ちょっと変わったな。
前までは他者を寄せ付けない雰囲気をむき出しにして安易に近づけなかったのに、今は放っている空気が柔らかい。
「うちは男兄弟だし親父もあんな感じだし。だから女との接し方が分からないっていうか……。今までこんな風に話すヤツなんていなかった。だから言葉足らずでお前を傷つけたとしたら……」
「私、傷ついてないよ!」
食いぎみで否定した。
聖は悪意がある言葉を言わない人だって知っている。それに聖は私の知らないところで守ってくれていた。代わりに怒ってくれた。
「それに私は聖にならなに言われても平気だよ!男と話してるように接してくれても全然大丈夫だし、言葉だって選ばなくても……」
「お前は男じゃねーだろ」
聖の瞳が私のことをまっすぐに見つめている。夕日のオレンジが彼の髪の毛に反射していて綺麗。
ドクンと心臓が速くなる前に聖の手が私へと伸びてきた。そして彼の指先が、そっと私の髪の毛に触れる。
とても優しい触り方だった。まるで繊細なガラスを扱っているかのように。
なにかを言いたそうな顔をして、なにかをしようとしていた素振りをして。
でも聖はゆっくりと、私の髪の毛から手を離した。
「ゴミついてた」
そんな分かりやすい嘘をついて。聖は再びレポートをやりはじめた。