となりの一条三兄弟!



なに、なんなの?

半泣きになって、その場にうずくまっていると……。


「おい」

突然、腕を掴まれてビクッ!とまた肩が縮まる。


「……やめてっ!来ないで」

その手を振り払おうとすると、聞き慣れた声が飛んできた。


「バカ。落ち着け。俺だ」

「こ、聖……」

なんで聖が私の部屋にいるのかは分からない。でも顔を見た瞬間に安心して、ますます涙があふれてきた。

ヒクヒクと子どものように泣いている私の背中を聖は優しく擦ってくれていた。


「お前のものすごい悲鳴が聞こえてきたから慌てて来たんだけど、大丈夫か?なにがあった?」

その声に不思議と心が落ち着いていく。

聖は部屋着で、しかも裸足だった。どうやらベランダを乗り越えてきてくれたらしい。


「今ね、そこに黒いなにかがいたの」

「黒いなにかって?」

「分かんないけど、たしかにベランダに浮いてた。それがすごい不気味で怖くて……」

思い出しても鳥肌がたつ。暫く夢に出てきそうだ。


「ああ、もしかしてカラスか?」

「え……?」

「いや、俺が飛び移る時にバサバサッて大量に飛んでいったから」
 

つまりあの黒い物体はカラスだったってこと?

なんで私のベランダに?

そもそもカラスが集まって人の形のようになることってある?そんなの誰かが操らない限り不可能なんじゃ……。

「どうした?」

私が考えこんでしまったから、聖は心配そうな顔をしている。

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