となりの一条三兄弟!
「お前はそういうヤツだよな」
「え?」
「自分の気持ちとか考えとかはちゃんとあるのにそれを優先することはない。いつも自分じゃなくて誰かのことばっかり」
「………」
「だから似てるんだよ。お前は。母さんに」
……聖がそんな風に思ってくれていたなんて知らなかった。
同時に〝母さん〟と口に出してくれた勇気と覚悟が見えて、すごくす胸が苦しくなった。
聖は黒髪の隙間から私のことをじっと見つめていた。でもそれは狼なんかじゃなくて、優しい人間の瞳だ。
「お前になら話してもいいよ」
そうニコリと笑ったあとで、過去を振り返るように彼が満天の星空を見上げた。
「前にも聞いたと思うけど母さんは人間だった。こんな俺たちを育てるのはすげー大変だったと思うけど、俺が思い出すのはいつも笑っている顔。笑顔が絶えない優しい人だった」
まるで子どもに戻ったような顔つき。だけどそれは次第に曇っていく。