となりの一条三兄弟!



きっと聖はその日の出来事を戒めのように心に刻んでいる。

だから聖は狼にならない。

だから狼になることが怖い。 


「俺は感情のまま狼になって母さんを死なせた。きっと俺はまた狼になっても制御できずに誰かを傷つける。それが……今も怖いんだ」

そう言ってうつ向く聖の体が少し小さく見えた。

この10年間、誰にも言えずに苦しんでいたことを思うと、私まで胸が張り裂けそうになってくる。


「ねえ、そっちに行ってもいい?」

気づくと、そんなことを聞いていた。

飛び越えられる距離でも、きみの体温までは分からない。もっと聖の傍にいきたい。


「うん。きて」

聖は手を伸ばしてくれた。私がその手を握ると、彼は待てないように、すぐに体を引き寄せてくれた。 

私はそのまま聖の体をぎゅっとする。


「自分が傷つくことより誰かを傷つけるほうが怖いなんて、お母さんに似てるのは聖のほうだね」

そう言って、抱きしめる力を強くすると、聖は応えるようにして私の背中に腕を回した。

お互いに少しだけ体が冷えているけど、こうしていると、温かくて、優しくて、安心する。

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