となりの一条三兄弟!
「聖が狼になってみんなに迷惑をかけたとしても離れていかない人たちが聖の周りにはいる。昴さんも晶くんも匠さんも、それに……私もいるから」
私がかけられる言葉なんて限られているかもしれない。
でも聖はひとりじゃない。
ひとりだって思わないでほしい。
それが少しでも伝わるように、私は彼のことを抱きしめ続ける。
「今すぐじゃなくても狼の自分も人間の自分もちゃんと好きになって」
苦しいなら狼にならなくていい、なんて言わない。
人間のまま楽しく生活すればいい、なんて言わない。
だって聖は、狼男だから。
その血筋があったから、こうして聖は生まれてきた。
「お母さんもそれを望んでると思う。きっと今でも一番近くで聖のことを見てるはずだよ」
聖の部屋に飾ってあった〝あの写真〟のように。
目と目が合える場所に今でも置いてある写真に写るお母さんの顔は本当に優しくて、その面影は聖の中で永遠に消えることはない。
だからこそ『狼の自分を嫌いにならないで』って、言っているように感じていた。
「そうだな。ありがとう」
聖の声はまだ震えていたけれど、それでもどこか吹っ切れたような、そんな彼の心の動きを私はひしひしと感じていた。