となりの一条三兄弟!
「たまたま廊下を通ったらお前が見えたもんで」
「へえ。そうですか」
霧島くんとふたりだけの教室は重苦しかった。でも今回は隣のクラスに生徒や先生もいるし、なにかあればすぐに誰かを呼ぶことができる状況だ。
「私、急いでるから」
あいにく霧島くんみたいに授業に出なくても優遇される立場じゃない。
――ガタッ。
教室から出ようとすると、霧島くんはわざと私の前にある机に足をかけて、通れないようにしてきた。
「私、近づかないでって言わなかった?」
怖がるから見下される。なにより無神経に聖の過去に触れてきたことを、私は許していない。
「通してくれる?」
霧島くんの足を手で払いのけようとすると、思いきり髪の毛を引っ張られて、私は前のめりになった。
息がかかるほどの近い距離。
霧島くんの瞳は吸い込まれそうなほど濃い黒色をしていた。
長時間見つめていたら、二度と出られないんじゃないかと思うほど深い。
「な……なに?」
抗いたくても、霧島くんは強い力で私の髪の毛を掴んでいる。