となりの一条三兄弟!
「俺は女に触れるとなぜかこうなる。それは時間場所関係なく。だから不便で仕方がない」
そう言いながら、霧島くんはやっと私から唇を離した。
「お前には協力してもらうぞ。佐崎茉莉」
……協力って、なにを?
聞き返す前に、バタバタと誰かが廊下を走ってくる足音が聞こえてきた。
特別扱いされているとはいえ、今の姿を見られると不都合なのだろう。
霧島くんは「ちっ」と舌打ちをしたあと、教室の窓を開けてサッシに足をかけた。
「忘れるなよ、約束だ」
そう言って霧島くんは2階の窓から飛び下りていってしまった。
「ハア……ッ茉莉。授業に来ないから先生に話して様子を見にきたよ。教科書あった……ってなにこれ?」
「景ちゃん……」
床には数えきれないほどの羽が落ちている。それがまるで黒い絨毯のようになっていた。
霧島くんから解放されたというのに、まだ思うように体が動かせない。
まるで悪夢から醒めないみたいに、私は彼が残していった羽をしばらく見つめていた。