となりの一条三兄弟!
――ガラガラッ。
保健室の扉を開けると中はとても静かだった。どうやら保健の先生はいないみたい。
仕方なく戸棚から消毒液と絆創膏を探していると「茉莉ちゃん?」と名前を呼ばれた。
「す、昴さん?」
そこにいたのはベッドに横になっている昴さんだった。勝手に誰もいないと思ってたからビックリしてしまった。
「具合でも悪いんですか……?」
自分のケガのことなんて忘れて、昴さんの元へと駆け寄った。
なんだか青白い顔をしてるし、昴さんはしっかり者だから体調管理は整えていそうなのに……。
「体育がグラウンドだったんだ。長時間だとやっぱりきつくてね」
「きつい……?」
ベッドから起き上がった昴さんは意味深に微笑む。
いつもかけているメガネはベッドの横に置かれていた。そういえばメガネなしの顔は初めて見たかも。
なんだか印象が違って見えるけど、やっぱり整いすぎているというか、とても綺麗な顔だと思った。
「茉莉ちゃんはどうして保健室に?」
「実は指をハサミでざっくりとやっちゃって……」
左手の人差し指を見せながらもまだ血が指先に滲んでいる。するとわずかに昴さんの顔つきが変わった気がした。
ゴクリと生唾を飲むような仕草。
「す、昴さんどうしたんですか……わっ!!」
言葉が言い終わらない内に気づけば視界が反転していて、私はベッドに押し倒されていた。
いつも優しい昴さんが強い力で私の腕を抑えていて、抵抗しようにもピクリとも動かせない。
メガネを外している昴さんの顔は〝あの時〟よりもはっきり見えた。その瞳は燃えるような赤色をしている。
恐怖というより昴さんがいつもの昴さんじゃないような気がして、呆然としていた。