となりの一条三兄弟!
雑草が足にくっついて気持ち悪い。
うう……ほら、今なにかに刺されたよ。本当に嫌だ……。
「聖!百葉箱に着いたよ!」
けれど、とくになにもない。
ただの嫌がらせ?でも聖はそんなことするタイプじゃなさそうだし……。
「しゃがめ」
「ええ!?しゃがむの?」
聖は無言で頷いていた。
ここまで来たらもう開き直るしかない。意を決して腰を落とすと私の視界に白いものが映った。
それは気持ち悪い虫じゃなくて、丸くてフワフワしたシルエット。
「あー!」
私は周りに反響するくらいの大声を出した。
それは行方不明になっていたウサ子とウサ吉だった。
ここは動物小屋から反対側だし、ウサギの移動距離を考えて、こんな場所まで歩いてこないだろうと、探しにこなかった。
私が抱き抱えると二匹は鼻をピクピクと動かしていて元気そうだった。
「無事でよかった……。みんな諦めかけてたんだよ?」
やっぱりヘンな人が持ち去ったんじゃないかとか、表の道路に逃げちゃって最悪は……とか、色んな憶測が飛び交っていた。
「なんでここにいるって分かったの?」
私は草を抜けて聖の元へと戻った。
「たまたま匂いがしただけだ」
またぶっきらぼうな言い方。だったら最初からウサギがいるって言ってくれたら良かったのに。
「お前が小屋に返してきて」
「え、なんで?一緒に戻そうよ」
「………」
「もしかして、ウサギが苦手なの?」
だからわざわざ私を呼びにきたのかな?
すると聖はウサギを見つめて消えそうな声でぽつりと呟いた。
「怯えさせるといけないから」
私にはそれが狼だからって聞こえた。